検証の夏
時々キノコやら米についてエクセルグラフをあれこれ作っているのでご存じかもしれないが、夏休みの宿題で一番好きなものと言えば、自由研究だった。
何の役にも立たないというのに、何故だか壮大な使命感を持ってベランダに座り込み、家の前を通る人たちの男女比やら、徒歩率、自転車率をカウントしたりした。もっと有意義な調べ物をした子は統計グラフコンクールに入賞していたというのに、何故あんな無駄な時間を・・・。
でも今でもそういう無駄な検証が好きだ。
「走れメロス」は走っていなかった!? 中学生が「メロスの全力を検証」した結果が見事に徒歩 - ねとらぼ
ずいぶん前に話題になっていた、この中学生の自由研究には「こいつ、やるな!」と感動しつつも悔しい気持ちにさえなった。「やられたぜ!」と。
そうか、メロスは走っていなかったか・・・「走れよメロスにした方がいい」か・・・。そうだったか。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/09/15
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一夏中かけて、僕と鼠はまるで何かに取り憑かれたように25メートルプール一杯分ばかりのビールを飲み干し、「ジェイズバー」の床いっぱいに5センチの厚さにピーナツの殻をまきちらした
5年ほど前の夏は、友人タキコとやたらめったらビールを飲んで過ごした。夕方に集合してビールを飲んで、ほろ酔いでイトーヨーカドーを冷やかしたり、地元のお祭りのしょぼい花火を見たりしていた夏の終わり、ちょっぴり切ない気持ちで我々は夏を振り返っていた。
「今年はよくビール飲んだ夏だったな」
「そうね。村上春樹の“風の歌を聴け”みたいだったね。あの小説の中でさ、主人公と友達がビールばっかり飲んで夏をすごしてさ、25メートルプール一杯分くらいのビール飲んだって言ってたよ」
すると、ほろ酔いだったタキコが目を見開いて立ち止まる。
「25メートルプール一杯?ちょっと待って!それって何リットル?」
えーと、えーと、体積ってどうやって求めるんだっけ、1立方メートルは何リットルだっけ。計算したいのだけれど、なにぶん酔っ払いなので頭も回らない。
大笑いして帰宅した後、タキコからメールが来た。「25メートルプール1杯分のビールは約36万リットル!」
・・・36万リットル!!ビールピッチャー1杯が1.8リットルだから、約ピッチャー20万本!ひと夏を6月から8月までの3ヶ月=90日として一日2222本のピッチャーを二人で消費!
まあ、ほら、物語だからね?多少盛ってもしょうがないよね?、と私が宥めるも、負けず嫌いのタキコは「そんなん不可能やで?1日目から急性アル中で死ぬわ!!」と憤っていた。
あれが5年前の夏。夏と言えば自由研究。
今年の夏は、友人たちとご飯を食べながら、何故だか「母を訪ねて三千里」についての検証することになってしまった。
そもそも三千里とは何キロなのか。
便利なものでgoogle先生は即答してくれる。1万2千キロ。
1万2千キロってどれくらいなのか。それも一発検索だ。パリから北京までの大陸横断距離らしい。マルコはイタリアからアルゼンチンまでのこの距離を猿と共に越えて行ったのだ。
「なんでマルコはそんな無謀な旅に出ちゃうのよ、何の必要があったのよ」
どうやら、出稼ぎ中の母親に会いたくて会いたくて震えたらしい。だからって!!
「あの子、いくつ?幼児でしょ?そんな子が旅してたら普通、見かけた大人が保護するもんじゃないかしら?」
調べによると、マルコは9歳。
「9歳!?幼すぎるわよ!どう見ても幼児じゃないの!!」
元保育士のかえる姉さんが憤る。
wikiによるとマルコは「とても元気で働き者だが、頑固で気分屋の少年。すぐに思い詰める癖があり、悲観的に考えてしまう」少年らしい。思いつめるあまり、12000キロの旅に出るのか・・・。
そして可哀想なのが隣の家のカタリナおばさんだ。マルコの母親が出稼ぎに行って以来、母親代わりで面倒をみてきたというのに、マルコ出奔後の心痛ときたら如何ばかりであったろうか。「私の監督不行き届き・・・?」と震えながら日々を過ごしたのではなかろうか。
熱い議論はイタリアンを食べ終わり、スターバックスに場所を移してからも継続し、我々はこう結論付けた。
「・・・ねえ、これ、感動物語じゃなくない?ただの迷惑な子供の話じゃない?」
・・・なんにせよ、夏は自由研究がしたくなるものですね。ですよね?
- 作者: 小山真弓,エドモンドデ・アミーチス,日本アニメーション,Edmondo De Amicis
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