90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

2014-01-01から1年間の記事一覧

どれくらい

バナナスタンド好きな後輩ふみは、臆病なくせして、平気なフリで塀の上を歩いて行く埃まみれの野良猫みたいな子だ。 この例えはわかってもらえるだろうか。 うまく垣根の間をすり抜けていくようにも見えるけど、それなりに苦労もあるらしく毛並みは少し荒れ…

いとをかし

冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず。 霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし。 清少納言「枕草子」 今日もまた雪で、先週存分に堪能したからもうそんなにはしゃがない、と思いつつも…

90億の神の御名

90億の神の御名 (ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク 2) (ハヤカワ文庫SF)作者: アーサー・C・クラーク,中村融,岩郷重力+T.K,浅倉久志・他出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/07/30メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 19回この商品を含むブログ (1…

自由(リベルテ)

欲望もない不在の上に 裸の孤独の上に 死の足どりの上に ぼくは書く おまえの名を 戻ってきた健康の上に 消え去った危険の上に 記憶のない希望の上に ぼくは書く おまえの名を そしてただ一つの 語の力をかりて ぼくはもう一度 人生を始める ぼくは生まれた …

デヴィ活

大雪の前の日、かえる姉さんから呼び出しがあって馳せ参じた。 ちょっと遅れて地元のパスタ屋さんに着いたら、姉さんはソファーにどっかりと寄りかかって、眉間にシワを寄せて言う。 「今日さ、占い行ってきたんだわ」 あら、どうだったの? 「あたしね、会…

フェティシズム

小さな頃の弟は、父の脛と自分の脛を見比べて呟いたものだ。 「あーあ、オレも早くおとな毛生えたいなあ」 おとな毛っていうのか、ああいうの。でも確かに大人になると生えてくるんだものね、おとな毛だね。そんなおとな毛が生えはじめる小学校高学年の頃か…

特別な週末

金曜日、友達とご飯を食べて「明日は何十年ぶりに大雪になるんだってね」「そんなこと言ったってどうせ降らないでしょう?」「でも、いざ雪が降ったら外にでなくてもいいように買い物をして帰りましょう」とスーパーに行った。 【地獄】 たかが雪で食料品の…

この恨みはらさで

新婚時代に、風邪をひいた母が、会社に出かけようとする父に「ごめん、今日はご飯を作れそうにないの」と言ったところ、父は意気揚々と「心配ないよ。オレ、外で食ってくるからさ!」と答えたそうだ。 母は未だに風邪をひくたびにネチネチとあの日の文句を言…

名前をつけてやる

okkoさん(id:okko326)に■ネーミングのつぼ - ひぐらしPCに向かいてという記事で言及して頂いて、そうだそうだ、と商品名に関するあれこれを思い出したのですが。実家で使っていたスライサーは、その名も「ベンリナー」ベンリナー 万能野菜調理器 CBV04出版…

ごちそうさま

先月末、小林カツ代が亡くなった。料理研究家・小林カツ代さん死去「私のレシピは永遠に残るのが嬉しい」 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュースよそんちの肉じゃが - 90億の神の御名 前の記事でも書いたけれど、カツ代レシピのご飯を作る度にいつも、「…

From a distance

最近気になっている盆栽も、箱庭も「世界を俯瞰する」「神のような目で物事を見渡す」という辺りがキモになるらしい。そういう点で、箱庭に至っては精神療法にも使われている。 結局の所、「神」というのは物事を俯瞰する眼差しのこと、自分を第三者の目で見…

私、なんだか

私何だか死なないような気がするんですよ―心とからだについての282の知恵作者: 宇野千代出版社/メーカー: 海竜社発売日: 1995/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る「私、何だか死なないような気がするんですよ」という、宇野千代の有名な言…

すごい豆まき・すごい子ども

大人になって「4月から新学期」という感覚の薄れた今、節分が新しいシーズンの始まりだ、という気持ちが強くなってきている。これで小厄も終わるし立春だし、と心待ちにしていたが、福豆コーナーはあまり見ないようにして通り過ぎた。 だって、鬼のお面とき…

夜はやさし

この週末と来たら、土曜日は昼間に祖母とデート、夜は両親と食事、日曜日は昼間は山友達のおじさんと鎌倉ハイキング、夜は高校の先輩たちとの飲み会と、まるで首相動静のようにイベント続きだった。 日曜日の夜の飲み会は遅くなるしな、山から帰って風呂入っ…

おくりびと

声に出して読みたい日本語作者: 斎藤孝出版社/メーカー: 草思社発売日: 2001/09/12メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 59回この商品を含むブログ (98件) を見る昨日に引き続き、本棚の話だけれど、祖父が亡くなってしばらくして、両親と一緒に祖母の家に行…

理想の書架

私の本棚には自分の好きな本ばかりが並んでいるけれど、時々本棚をぼんやり眺めながら思う。「自分が一番読みたい本が入っている本棚はこれじゃない」と。写真は2枚とも、実家の本棚。 夏休みに実家に行ったら、母が「うちの本はもう好きに持って行っていい…

あなたの知らない世界

将棋の世界では王将戦が盛り上っているらしい。羽生さんは箱根花月園で、おやつにいちごショートケーキなんか食べながら頑張ってるそうだ。 王将戦:羽生、鋭く攻め快勝 1勝2敗に - 毎日新聞 王将戦中継ブログ : 午後のおやつ 急戦矢倉の作戦を採った羽生だ…

煮豆の思ひ出

中学3年の頃、初めて塾の冬期講習というものに通った。塾に通うなんて、受験生っぽいわー!朝から晩まで勉強なんて受験生っぽいわー!と呑気にトキめきながら。 理科の問題文の「鉢植え大根」という言葉に気をとられ「鉢植え大根てことは、鉢はものすごく長…

ゼロ・グラビティ

メリー・ポピンズに出てくるアルバートおじさんは大の笑い上戸で、笑い出すと体が宙に浮いてしまう。 楽しくていいかと思いきや、「前回なんて3日も天井から降りることができなかったんだ、これはシリアスな問題だ」とバートが言う。とは言えすぐに一緒にな…

春の声

ヨハン・シュトラウスの「春の声」先日YMCAのチャリティコンサートで、ソプラノ歌手の方がこの「春の声」を歌う前に、ドイツの冬と春のことを話してくれた。 なんでも、その方は以前ドイツに音楽留学をされていたそうだが、ドイツの冬というのは本当にどんよ…

日々は過ぎゆく

まるでパンチドランカーのように、美しさにうちのめされているうちに週末が過ぎていった。 この土日でできたことは髪を切ったこととジェラートを食べたことだけ。 日曜日は、東洋大の設楽兄弟も参戦するという奥むさし駅伝を見に行こうと思っていたけれど、…

運命と美しさ

坂口安吾は「堕落論」の中で東京大空襲について触れ、こう書いている。 「けれども私は偉大な破壊を愛していた。運命に従順な人間の姿は奇妙に美しいものである」 「あの偉大な破壊の下では、運命はあったが、堕落はなかった。無心であったが、充満していた…

くぼさん

今朝、台所の窓から明けていく空を眺めながら、ふと南野陽子の「あなたを愛したい」という歌を思い出して口づさんだ。 「あなたの夢でふと目覚めた夜明け 葡萄色の空に瞬く星屑がゆれてた 恋の予感がそっとささやいてる 目覚めに見る夢はかなうと」小学生の…

注文の多い料理店

「注文の多い料理店」と言えば間違いなくSUBWAY。あのサンドイッチ屋に入った事がない方もいらっしゃるかもしれませんが、とにもかくにも面倒くさい店なのだ。メニューの中から「コレ」と選んで注文するも、やれパンはどれにするだの、ドレッシングはどうす…

この手をすり抜ける

今シーズンからロッテに移籍してしまう元西武ライオンズの涌井くんのお母さんが、野球雑誌のインタビューで言っていた。 「あっという間に親元を離れてしまった。もう少し手をかけたかった。横浜高校時代、久々の帰省の後で寮に帰る日に駅まで車で送った。振…

ご開帳

私も会社でこんな記事を書いていたりするので、人の事は言えないけれど、隣の席のタカハシさんが時々くすくす笑いながら何かしていたり、真剣な顔でどうやら仕事じゃないらしいことをしていたりする。 そして、そんな時に主任が後ろを通りかかろうものなら「…

風に吹かれて

寒いし、死ぬかもしれなかったし、箱根駅伝歩くので手一杯だったし、すっかり山から足が遠ざかっていた。本当は年始に丹沢の阿夫利神社へ初詣ついでに大山に登ろうかと思っていたのに、それもやらずじまい。けれど、いつも覗き見のようにしてこっそり楽しん…

封印を解き給ひし者

スプライトとかチェリオとかメローイエローとか、懐かしの飲み物の復刻に「おおお!」と興奮しても、ペットボトルに入っているのを見るとガッカリする。 瓶でしょ。瓶に入れてよ。瓶を返すとおばちゃんが5円返してくれるのよ。 どこかに旅行に出かけて古い酒…

人の楽しみ

週末の鬱金香(チューリップ) (中公文庫)作者: 田辺聖子出版社/メーカー: 中央公論社発売日: 1996/11メディア: 文庫購入: 1人 この商品を含むブログ (2件) を見るこの田辺聖子の短編小説集の中に「篝火草(シクラメン)の窓」という作品がある。線路沿いの家…

恋は恋

「恋はするものじゃない、落ちるものだ」と、江國香織原作の映画「東京タワー」の中で、V6の岡田くんが言っていた。全然おもしろくない映画だったけれど、あんまりに自信満々にそう言われるから「ふーん、落ちるのか」と思っていた。しかし足元に注意して生…