90億の神の御名

この世界のほんの些細なこと

泡沫

ほんとうに、やさしい

訪問者はみんな、自分としてはいちばんきれいに見えるようにつとめるのよ。女たちが、いちばんきれいなもんはなんでも、それこそ古いもんでも、ほんとうになさけなくなったもんでも、何もかも身につけようとするその気持、とてもやさしい、あったかいもんだ…

今夜すべての猫が

実家には入れ替わり立ち代わり猫がいた。 プールに行く途中の私が、捨て猫を拾ってスイミングバッグに入れて持ち帰ったり、剣道に行く途中の弟が拾って、宮本武蔵にちなんで「たけぞう」という名をつけたり、家族で河原にバーベキューをしに行ったら箱に入っ…

DNA

親子というのはおかしな所が似るものだ。 弟の足の小指の爪は父のそれに酷似していて「DNAはこんな片隅までぬかりなく仕事をするもんだな」と驚いた。 また、自分の父親のせっかちな所がすごく嫌だと言っていた父の、今の歩き方や口癖やせかせかした感じは祖…

大きいことはいいことだ

iOS7とどうも相性が悪いし、画面の小ささに疲れてしまったので、MNPでdocomoのGalaxynoteにしてきた。 iPhoneからの卒業だ。見よ、5.7インチ!初めてのAndroidには予想以上に苦戦。 例えて言うなら、iPhoneはワンルームのアパートだから、掃除用具は全部ここ…

キラキラ光って

大きなクリスマスツリーが立った 谷川俊太郎キラキラ光っていて この世じゃないみたいにきれいだけど これも人間がつくったものだよ 夜のあいだに大いそぎで ビニールテープを巻いたりして 時々ビリっと感電したりして つくった人は寒くて寒くて きれいかど…

米の宅急便

年末に向けて仕事がバタバタし始めた。忙しさのピークはクリスマスイブだ。 バタバタの高揚感の中で主任は鬼長官のように言う。 「お前ら!クリスマスなんかあると思うなよ!君たちの前にあるのは書類の山だけだ!」主任は行事を大事にする人で、既にサンタ…

新しい朝

新しい朝が来た 希望の朝だ実はこの、ラジオ体操の歌が歌えない。恥ずかしながら、ラジオ体操にきちんと参加したことがなく、知らないのだ。もちろん私の年代では夏休みの間、毎朝公園でラジオ体操は行われていて、夏休み前には出欠カードが学校で配られた。…

やられたらやり返す

賃貸の集合住宅に住んでいると、退去者が出た場合、空室になった部屋にハウスクリーニング業者がやってくる。そしてバルサンを焚く。すると、その部屋にお住いであったGという名の虫がほうほうの体で我が家に避難してきたりする。その為、退去の引っ越しを見…

立て直す日

金曜日、首都高のすごい渋滞を給湯室から見下ろした。年末らしく珍しく、仕事もなんだかやることに追われてバタバタ帰った。駅からの道、大きな業務用炊飯器を抱えて走る女の人とすれ違った。 どこかのお店でご飯がなくなりそうなのかしら。 その慌ただしさ…

貧しき憂い

聖なる方の生誕の日を目前にし、一言物申したく思い候。キリスト教信者という訳ではないが、子供の頃、日曜学校に通っていた。普段は子供讃美歌しか歌わせてもらえなかったけれど、クリスマス礼拝が近づくと、大人用の黒い表紙の讃美歌集の中の歌も歌わせて…

大人買い/よき友

徒然草の中で吉田兼好は言っている。 「よき友、三つあり。一つには、物くるる友。二つには医師。三つには、知恵ある友。」ハッキリ言うわね、兼好。しかし全く、物くるる友はありがたい。 山友達のおじさんが時々、ふるさと小包のようにして、自分で作った…

クリスチャンでもないのに

「クリスチャンでもないのに そう思っていたけれど クリスマスは優しい気持ちになるための日だね」 と、マッキーは歌っていた。先日、クリスマスソングがものすごく好きで、年間を通じてレコード屋さんでクリスマスソングを探し続けた挙句、自分でリミックス…

魔法にかけられて

横浜の山下公園は観光地としてとても有名だけれど、なにぶん公園なのでトイレは公衆であまり綺麗じゃなかった。それで、横浜育ちの母は昔から山下公園に行くときは向かいのホテルニューグランドのトイレを使っていたらしい。まだ、母のお腹に弟が入っていた…

切っても切れない

二十歳の頃、一人暮らしをするにあたって、実家から包丁をもらった。母が、買ったはいいが「切れない」「木屋なのに!」「木屋ももう終りね」「名前負けだわ」と散々悪態をつき続けた木屋の包丁「團十郎」 確かに切れないので、そのうち包丁を買い換えたくな…

前略、厠の中より

中高生の頃の友人ゴトオの家のトイレには毎年相田みつをカレンダーがかけられていて、遊びに行ってトイレを借りるたびに、いつも含蓄のあるような、ないような言葉を投げかけられた。 それで毎回、深いため息をつきながらトイレを出て、「みつをが、つまづい…

~し続ける

~し続ける:keep ~ing、to continue ~ing 頻出イディオムにこんなのがあったっけ。一つの事を黙々とやり続ける、という事に子どもの頃から強い憧れがあった。 きれいに編んだ駕籠や鍋敷きを見れば、編み目を辿りながら「こういう事をして一生暮らしたいな…

言うことなし

徒然なるままに日暮らしパソコンに向かいて、心に映りゆく由無し事をそこはかとなく書きつくる日々。 こんな記事を見つけて、おお・・・と自省する相手を疲れさせてしまう・・・ムダに文章が長い人の特徴 - NAVER まとめ文章というのは長くするのは簡単だけれど、…

子やぎ日和

おおかみと七ひきのこやぎ―グリム童話 (世界傑作絵本シリーズ―スイスの絵本)作者: グリム,フェリクス・ホフマン,せたていじ出版社/メーカー: 福音館書店発売日: 1967/04/01メディア: 大型本購入: 2人 クリック: 11回この商品を含むブログ (57件) を見る ある…

下半期

いよいよ12月。 10月に、山友達のお姉さんに「なんだか今年は同窓会があったり、偶然昔の知り合いと再会したり、私にとっては再会の年みたい。まめさんにはどういう年の印象?」と聞かれて、「うーん、苦手を克服する年かなあ」と答えた。不思議なくらい突然…

先人の道

北海道北斗市のキャラクターがずーしーほっきーなる奇怪な生き物に決まったのですってね。 ほっき貝のお寿司をイメージしたこのキャラクターの米の部分は可愛い名前のふっくりんこ。目がロンパリなのは何故かしら。雑記帳:「ずーしーほっきー」北海道北斗市…

行きだおれ

かつて「路上で寝ている人がいます 注意!」と運転者向けに書かれた看板を見かけて驚いたことがある。どうやって注意しろというのか・・・。祖母曰く、幼き日の私ときたらどこでも眠ってしまう子どもだったそうだ。 「まめちゃんは、眠たくなると道端でもどこで…

愛される理由

オンディーヌ (光文社古典新訳文庫)作者: ジャンジロドゥ,Jean Giraudoux,二木麻里出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/03/12メディア: 文庫 クリック: 10回この商品を含むブログ (19件) を見るジャン・ジロドゥ作の戯曲「オンディーヌ」の主人公オンディー…

美しい感じ

「山路を登りながら、こう考えた。 知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」 という文章で始まる夏目漱石の小説「草枕」を、カナダ人のピアニスト、グレン・グールドはこよなく愛したそうだ。「魔の…

闇の中

最近各所で流行中の自由律風に言うなら、「暗闇では、なにもかもが怪しい」いつかの春、ほどよく酔っ払って鼻歌交じりで桜並木を歩いていたら、木と木の隙間におばあさんがひっそりと座っていて、「ひいい!!」と息を飲んだ。もちろん彼女はただ、夜桜が見…

変わり果てた姿

頂き物の柚子ジャムをおすそ分けしようと、実家に寄ったら、母が「あなたに渡す物があったはず!メモ、メモ!!」とバタバタし始めた。 そうして探し出されたメモには書いてあった。「まめさん:枕、お茶、うそ」 なに、その三題噺みたいなラインナップ…。し…

おとぎ話のリアリティ

この時期になると、周囲のお父さんお母さん達が頭を悩ませ、ため息をついて言う。 「クリスマスにサンタさんに何をお願いするの?って子供に聞いてるんだけど教えてくれない」「多分欲しがってるのはアレだと思うんだけど、クリスマスまでに変わっちゃったら…

挑戦する生き物

ハンマー投げの室伏と同じ体育大で陸上をやっていた友人タキコと、いつか家で世界陸上を一緒に見た時、ふと、長らく不思議に思っていたことを口にしてみた。 「ねえ、どうして1秒でも早く走ったり泳いだりしたくなるのかな。どうして42キロも走ってみたくな…

自分の言葉

かの大江健三郎は、大学受験に失敗した事を母親に報告する際に井伏鱒二の小説「山椒魚」の台詞を引用して「なんたる失策!」と言ったところ「こんな時くらい自分の言葉で話せないのか!」と叱られたと言う。そのエピソードに大笑いしてから、私と母の間では…

つまらない人

友人ヤマダが婚活をしている。なんでも婚活サイトに登録をしてメールやり取りをして、気が合えば「会いましょうか」という話になり、会ってくるのだそうだ。 月初にみんなで会った時に、「中旬に婚活サイトで知り合った人とデートをする。相手は歴史好きの人…

火の玉

夜明けの街と新聞屋さんのヘッドライト。今日も「アイソン」と呟いて、朝4時に起きた。 近所の公園で、空に双眼鏡を向けて、今日はあの辺りにアイソン彗星がいるはずだ、と探していたら、目の端に大きなオレンジ色の光が映った。 北の空をすーっと長く横切っ…